平成9年度では、論文「GDPの国際比較」において、国際連合における購買力平価の計算方法が、(1)諸国のGDPを共通した貨幣建てで表示するための購買力平価を算出する段階と、(2)国際比較される諸国間では各国内で取り引きされる財貨・サービスが異質であるために価格比較できないという状況下で購買力平価計算に必要な比較可能品目価格を代替する基礎的データである購買力平価を算出する段階という、二段階構成であることを明らかにした。 上記の知見は、購買力平価の理論的内容において諸計算方法ごとに異なってくる側面と諸計算方法に伴う実践的諸条件への適・不適合性を比較・検討するという本研究課題における基礎的段階としての意義を持つ。なぜなら、購買力平価計算における今日の事情、すなわち、(1)の段階に関しては国連と共同して購買力平価を計算するOECD地域では異なる計算式が併用される余地があるけれども、(2)の段階では一定の方法しか用いられないから購買力平価計算式における理論的内容の被選別性が強まること、さらに、(2)の段階では先進国グループと東南アジア諸国グループのそれぞれで固有な方法が採用されている状況から示唆されるように諸計算方法の適用が地域的な実践的諸条件に規定されていることを考え合わせると、(2)段階の計算方法が本研究の考察対象として措定されるからである。 以上を踏まえて、次年度では、(2)段階の計算方法に関して、その理論的内容と実践的諸条件に対する適・不適合性を比較・検討することとなる。
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