この年度の主たる課題である所得再分配に対する所得再分配政策、経済成長およびインフレーションの効果を分解する方法を検討し、ある程度の分析が可能となる方法を開発した。この方法は、従来の所得分配と税の累進度を同時に分析するいわゆる大域的方法ではなく、所得階層ごとの局所的な税の累進度を推計し、所得階層ごとに経済成長やインフレーションの影響を見ようとするものである。 具体的には、従来の所得分配および所得再分配に関する効用理論をベースとする研究方法ではなく、所得分布をベースに所得階層ごとの税支出関数を推計する方法を取った。この方法は、所得階層別データに税支出関数を当てはめる方法と、所得分布関数を推計した上で税支出関数を推計する二通りの方法があるが、本研究では後者の方が、細かな所得階層における税支出を推計でき、税の累進度についても細かく推計できるので、こちらの方法を採用した。 このようにして求めた所得分布関数と税支出関数を用いて経済成長とインフレーションの影響を見ていくが、具体的には、所得分布関数と税支出関数の組み合わせを変える事により、経済成長による所得分布の変化とインフレーションによる税支出関数の変化をそれぞれ取り出す事が出来ると予想される。実験のデータに当てはめた上で、所得再分配効果を経済成長とインフレーションの影響を考慮しながら検討する作業は次年度の課題としている。また、推計された所得分布関数と税支出関数を用いたシミュレーションも次年度の課題としたい。
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