本研究では、経済成長、インフレーションに加え、金融政策や財政政策が、ライフ・サイクルでの再分配に与える影響を、回帰分析を用いて分析した。データとしては、回帰分析に耐えうる長期にわたる時系列データの必要性から、所得階層別のデータとして昭和38年より五分位のデータが利用可能であるが『家計調査』より、所得及び消費の不平等尺度を計測し、単年度での再分配と、ライフ・サイクルでの再分配に関する効果を計算した。具体的に、回帰分析で用いた各再分配効果の決定要因としては、マクロ経済変数、物価指数等、財政政策変数、金融政策変数、家計調査より得られる家族属性を説明変数として、特にライフ・サイクルでの再分配効果の決定要因としては単年度の所得の不平等尺度や単年度での再分配効果の大きさを説明変数に加えている。更に、第1次オイル・ショック時のインフレーションの影響について検討するためにダミー変数を加えた。分析結果からは、ライフ・サイクルでの再分配効果は、単年度の所得分配の不平等や再分配の効果だけでなく、経済成長やインフレーションが再分配効果を弱めるのを始めとして、利子率や失業率等も再分配に対してマイナスの効果を持っている事が明らかとなった。一方。株価や地価の上昇率については予想に反し、再分配効果を高める方向に働いている事が示された。また単年度の再分配効果については、所得の不平等が進めば再分配効果が上昇する事がわかった。経済成長率に加え株価、財政赤字、輸出や世帯主の平均年齢などは単年度での再分配効果を高めるが、マネー・サプライの上昇率は再分配の効果を高める、という結果となった。インフレーションについては、単年度の再分配効果には影響を与えないという結果となった。これはマネー・サプライが直接再分配に影響を与え、マネー・サプライから物価上昇を経由する効果ではなく、マネー・サイプライが直接影響を与える結果となったからである。
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