平成9年度には、「ASEAN域内経済協力の政治経済学」の一貫研究は、当初の課題を達成し、多くの成果を生み出した。 第1に、出版社の都合で刊行の遅れていた単著『ASEAN域内経済協力の政治経済学』を、加筆修正の上、出版することができた。この中で、AFTAを含めたASEANの最近の域内経済協力、ASEANとAPECとの関連、BBCスキームとAICOスキームについても書き足すことができた。 第2に、ASEAN、APECについて、全国学会の第1報告として、発表することができた(「アジアの地域統合」、国際経済研究会、1997年10月、九州大学)。同報告において、AFTA他ASEANの最近の域内経済協力、ASEANとAPECの関係、BBCスキームとAICOスキームに言及しながら、アジアの地域統合について発表することができた。またその要旨は、『世界経済評論』(世界経済研究協会)に掲載される予定である。 第3に、最近の経済理論の重要な成果である、L.L.パシネッティー教授の経済理論書を共訳し、刊行することができた(佐々木隆生監訳、清水一史、本田雅子、ミカエラ・ノタランジェロ訳『構造変化の経済動学』、日本経済評論社)。この翻訳の過程で、統合理論とその基礎となる一般経済理論の研究も一層進めることができた。 第4に、ASEANや東アジアをめぐる経済並びに政治の学際的研究も、佐々木隆生北海道大学経済学部教授、中村研一同大学法学部教授との毎週のジョイントセミナーを含めて、一層進めることができた。次年度からは、国際学術研究の科研費も交付され(代表中村研一教授)、一層研究を進めることができると思われる。
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