今年度は、研究計画調書に記したように、(1)資料の収集と整理、(2)中間的な調査報告の作成をおこなった。 (1)必要な資料・情報の収集。鉄鋼業を中心としつつ、アジアの経済情勢や比較対象のために他の製造業に関わる資料を含めて広範に収集した。収集ルートとしては、データベースの活用、業界団体や個別企業からの資料収集などに努力した。特に、鋼材倶楽部・日本鉄鋼輸出組合からは、詳細な統計データや業務用資料を含めて収集するとともに、詳細なヒアリングをおこなうことができた。また、激化する国際競争の下での日本の鉄鋼メーカーのリストラクチャリングの進展について、工場見学・ヒアリングによる調査をおこなった。 2)中間的な調査報告の作成。東アジア鉄鋼業のダイナミズムを分析するための基礎作業として、生産構造からみた企業類型と国際分業の物的な構造について整理をおこない、論文「東アジア鉄鋼業の企業類型と貿易構造(I)(II)」にとりまとめて発表した。また、日本の鉄鋼メーカーの現状については、「住友金属工業(株)和歌山製鉄所見学記録」にある程度とりまとめた。 今年度は、予定より順調に研究が進行し、論文2本をとりまとめることができた。研究活動を通じて様々な知見を得たが、東アジアの鉄鋼業の企業類型と、これにもとづく国・地域別の生産構造の特性、鉄鋼貿易を通じた分業構造を整理できたことは重要であった。この成果の上に立って、各国・地域の鉄鋼メーカーの経営と競争戦略について立ち入った分析をおこなうことが、残された課題である。
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