本研究は、香港経済発展における香港政庁の役割を明らかにしようとするものである。平成9年度中には、(1)港湾開発の含意(2)都市計画の経済発展促進効果、の2点に関して重点的に研究が進められた。(1)に関しては、香港経済発展のプロセスにおける港湾開発の位置付け、ならびにその経済効果が歴史的、定量的に分析され、次のような事実が明らかにされた。 第1に、香港政庁は、コンテナターミナル建設に際して一切の支援を行わず、民間ターミナル業者が開発権益を得て、建設が進められた事実が確認された。第2に、香港政庁のターミナル建設の計画性は、経済性からみて妥当なものではなかった点が検証された。すなわち、政庁は、コンテナターミナルを地場輸出推進、東南アジア諸国とのハブ港化への意図を持ったのであるが、コンテナターミナル開発の成功は、結果的に中国の改革開放政策によってもたらされたからである。第3に、民間主体の開発方式による、香港コンテナ港の寡占状況の経済効果も分析された。第4に、香港に特徴的なバ-ジ業者が演じる独特の経済効果、すなわち、超過需要の安全弁、オペレーター独占力の抑止などが、「港湾レッセフェーリズム」の脈絡の中で評価された、などである。 総論で言えば、港湾開発は、香港政庁の自由放任主義が典型的に現出している領域であり、香港的経済発展モデルの優位性と問題点を端的に示している事実が確認されたと言えよう。 なお、上記(2)(都市計画)に関する研究成果は、平成9年10月の第56回国際経済学会全国大会で報告・議論され、現在英文にて論文を執筆中である。
|