研究概要 |
鉄鋼関連工業規格データベースシステムの中核を構成する工業規格承認製品データベースには,海外工場を含む日本工業規格(JIS)の鉄鋼関連工業規格の承認を受けた製品について,1製品を1レコードとして1141レコードを収納した。このデータベースによると,国内工場について,鉄鋼業における規格取得プロセスのパターンが事業所類型と製品構成によって異なっていることが判明した。海外工場については,製品ベースで見て承認件数は80年代後半から増大傾向にあり,地域的な広がりも見られるものの,累計承認規格数は80年代末から90年代初頭にかけて急増した後はほとんど増えていないことが明らかになった。 鉄鋼製品データベースシステムを構成する企業データベース及び工場データベースはほぼ完成し,企業データベース1745レコード,工場データベース2296レコードを収納するに至っている。製品データベースについては,製品分類の階層性をどのようにデータベース構造に反映させるかについての検討作業及び構造定義が完了し,目下データ入力作業中である。今年度は研究計画上,以上2つのデータベースシステムの構築が目的であったので,次年度においてこれらを活用して,本格的な分析を行う。 こうしたデータベース作成作業と並行して,工業規格の認証・審査プロセス,JISマーク取得の意味を考察した。その結果JISについては,製品規格の比較による製品レベルの国際競争力比較の試みは,製品生産を支える工場の生産システム水準をも明らかにしうることが判明した。一方で,企業は「いかなる規格をいかに取得するか」という規格戦略を持ち,自国規格の取得は販売条件もしくは促進手段であると同時に,企業内の標準化・品質管理手段であり,また他国規格の取得は当該国への輸出促進手段として位置づけているとの知見が得られた。
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