平成9年4月に生命保険会社(日産生命)が、秋には証券会社(三洋証券や4大証券の一角である山一証券)が、さらに、銀行(都市銀行の一つである北海道拓殖銀行や徳陽シティ銀行)が相次いで経営破綻した。このように大型の金融機関の経営破綻が続出し、さらに早期是正措置や格付け対策のための貸し渋りも加わり、消費・投資マインドが急速に冷やされてしまい、平成9年度後半は景気失速の様相を呈してきた。そのため、政府も金融システム安定化対策として、銀行の自己資本の増強(優先株や劣後債の購入)や預金者保護の徹底のために公的資金の導入を決めるなどの動きを見せている。このような情勢は、本研究課題の重要性を改めて認識させるものである。 本年度の研究としては、当初、兵庫銀行の破綻を題材とした実証研究を行った。すでに明らかになったことは、(1)メインバンクの経営破綻は企業の時価総額にとってマイナスの影響をもたらす。(2)マイナスの影響はメインバンクとの結びつきの強さに依存する、などの点である。また、未発表の論文で暫定的に明らかにしたことは、兵庫銀行の経営破綻の影響を受けたのは、経営基盤の弱い銀行であり、健全銀行は影響をほとんど受けていないという事実である。つまり、市場参加者はやみくもに銀行の評価を切り下げたのではなく、合理的に行動しているのである。当然ながら、年度後半における金融機関の相次ぐ破綻により、制度・情勢の変化は急速を極め、その動きをフォローすることにも注力した。 平成10年度においては、(1)上述した暫定的な実証結果について追試を行い、また、分析対象を拡大し、頑健な結果を目指す。(2)金融機関の経営破綻の処理方法および望ましい金融制度のあり方についても検討をすすめる。
|