1.付加価値税に関する最近の論文、特に仕入高控除法と税額控除法について論及しているものを中心にサーベイをした。また、日本における付加価値税制導入の歴史を戦前の取引税、戦後間もなくの取引高税、1970年代以降の一般消費税、売上税、消費税の導入(あるいは導入失敗)の過程を振り返りながら、一般売上税の形態がより洗練されたものに変化してきた側面と、未完成のままに残った側面の両方をみた。未完成の側面としては、(1)帳簿方式を採用したこと、(2)それに伴って複数税率が採用できないこと等の問題が挙げられ、税額控除方式へ今後以降していくことが予想される。したがって、帳簿方式から税額控除方式への移行の問題が生じるが、これが次の検討課題となる。 2.地方消費税制度の創設や消費税の税率が変化することから、各地方団体への最終的な税収配分が変化前と異なってくる。変化前と変化後で地方財政調整がどの程度変化するかをジニ係数の計算をはじめとした各種統計指標で測ることにした。研究の成果の一部を平成9年度の日本財政学会で報告した(入谷純・玉岡雅之「中央と地方の財政構造-戦後財源調整制度からみた-考察-」)。報告では、現行の財源調整制度は必ずしも財政力の弱い地方団体を優遇している訳ではないことを、「厚生ポジション」という概念を初めて導入して、時系列的に明らかにした。 3.研究の途中で作成した財政データベースの一部をインターネット上のホームページ(http://pf.econ.kobe-u.sc.jp/kaken/data.html)で公開した。また、当該データベースを学術情報センターの公開データベース一覧に加えてもらった。
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