1994年以降、97年までの4年間の新規店頭公開企業数は毎年100社を上回っており、1997年12月末時点の店頭公開企業総数は800社を上回るまでに急増している。しかし、これら公開企業の多くが設立後数十年を経過した企業であり、成長初期段階の研究開発型ベンチャー企業の公開促進を目的に1995年7月に設立された店頭特則市場の公開企業数も、市場開設後2年以上を経過した1997年12月末時点において、アクモス、ATLシステムズ、マスターネットのわずか3社にすぎない。また、店頭公開企業の株価も1997年9月の日経店頭平均1000円割れ以降なかなか回復する兆しを見せず、低調な推移を示している。店頭市場低迷の背景にはいくつもの要因を指摘することができるが、特に店頭公開企業の成長性そのものに対する疑念をあげることができる。本研究では、1996年に新規店頭公開した企業110社を対象に、店頭公開企業の成長性について、業績面(売上高成長率と当期純利益成長率)と株価面(初期収益率と1、3、6ヶ月後のアフタ-マーケット・リターン)の両面から株式公開前後の成長性の推移を分析している。以上の分析を通じて、新規店頭公開企業の「低成長性」という状況が確認されるが、本研究では、こうした背景の1つとして、主幹事証券会社の引受活動と新規店頭公開企業の成長性との関連性をさらに考察している。店頭公開の場合、証券会社の引受活動のあり方が公開企業の性格を規定する側面が一層強いわけであるが、わが国においてはIPOの引受において4社が約8割の主幹事を担当するという極めて寡占的な性格を有している。こうした状況のなかで、4社が主幹事を担当した企業と4社以外の証券会社が主幹事を担当した企業の成長性にどのような違いがみられるのか、また4社間で公開企業の成長性にどのような特徴がみられるのか、業績面と株価面の両面から考察している。
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