公開企業数の急増にもかかわらず、新規店頭公開企業の中心は依然として成長段階中後期にある中堅企業であり、実質基準の形式基準からの乖離という状況に大きな変化はみられない。新規店頭公開企業の業績面の成長率を、売上高および当期純利益の2つの視点から株式公開前後で比較すれば、株式公開後にむしろ成長率が大きく落ち込み、しかも均一化する傾向がみられる。株価面においても、初期収益率(IR)は平均値べースで15%を上回っているが、以後傾向的に低下し、6ヵ月後のアフターマーケット・リターン(AR)はマイナスへと転じている。新規店頭公開企業の成長性と資本政策との関連性に関しては、株式公開後の売上高成長率と売出比率との間に負の有意な相関関係がみられる。他方、返済資金充当予定比率と公開企業の成長率との間には、明確な相関関係を見て取ることはできない。VC投資と公開企業の売上高成長率との間には、VC投資の有無(10大株主ベース)でみれば、公開前の成長率においてはVC非投資先企業との間に差がみられるが、公開後においてその差は小さくなる。株価面に関しても、VC投資と公開企業のIRおよびARとの間には、VCの投資先企業およびVCの投資先企業への関与の程度が大きい企業が、VC非投資先企業やVCの関与の程度が低い企業に比べてむしろパフォーマンスが低い結果となっている。主幹事証券別の引受実績を見れば、4社の引受シェアは依然として8割を超えており、4社以外の証券会社のIPO引受への主幹事としての関与は極めて限定的である。また、主幹事証券会社別に公開企業の成長性との関連性を分析すれば、業績面、株価面ともに野村証券のパフォーマンスが良好である。他方、業績面においては大和証券、株価面においては日興証券と山一証券が主幹事を担当した企業のパフォーマンスが悪く、4社以外の証券会社のパフォーマンスは、業績面、株価面ともに4社のパフォーマンスを大きく下回っている。
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