本研究は、ニューラルネットワーク、ファジィ推論、遺伝的アルゴリズムなどのソフトコンピューティングアプローチを用いて、消費者行動をモデル化し、マーケティング意思決定者の戦略支援となるシステムの構築をめざすと共に、ソフトコンピューティングアプローチという新しいアプローチの適用可能性を議論することを目的としている。 平成9年度は、マーケティング意思決定を行う上での課題やそれを支援する既存のモデルやシステムの研究動向をサーベイし、マーケティング意思決定モデル/システムの要件や課題を整理した。また、ニューラルネットワーク、ファジィ推論、遺伝的アルゴリズムなどの代表的なソフトコンピューティング手法の研究動向もサーベイし、各手法の長所と短所・問題点を整理した。その上で、これらのソフトコンピューティング手法を用いた「消費者満足構造分析システム」と「広告媒体計画システム」を実際に構築した。 「消費者満足構造分析システム」は、遺伝的アルゴリズムと学習型ファジィ推論を組み合わせた新しい方法によって、満足度を規定すると仮定される要因と全体的な満足度との関係をデータから学習し、その因果関係を人間が通常用いるif〜thenルールの形で自動的に抽出できるシステムである。この方法により非線形な満足構造を解明することが可能である。この研究の成果の一部を学会誌「マーケティング・サイエンス」に発表した。 「広告媒体計画システム」は、遺伝的アルゴリズムがもつ探索能力を活用して、標的消費者にとって効果的で効率的な媒体計画代替案を自動生成するシステムである。このシステムは消費者の媒体接触に関するデータから戦略目的を達成可能な代替案を複数個生成できることから、広告戦略の発想支援に有用なものと期待できる。現在、研究途上であるが、成果は学会誌などに投稿予定である。
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