研究概要 |
平成9年度は,ネットワーク環境における市場情報伝播に関する研究をおこなった.インターネットの技術的基礎となるルーター網の仕組みや,TCP/IPなどのデータ転送の手順や,DNSなどの仕組みを踏まえ,これが商取引の場として一般化する際にどのような問題を内包しているのかを洗い出した.電子商取引を支えるさまざまなソフトウェアや決済システムが依って立つ暗号化技術の現状と問題点について,代表的な「公開鍵暗号方式」を中心に分析をおこなった。 特にコンピュータ網における市場情報は,セキュリティ上問題となる第三者による盗聴・改竄・なりすましがコストに見合わないか,さほど長くない有限期間の範囲でできなければ十分であり,軍事情報などの解読とは異なり,「最適なシステム」が存在しうることになる。現在のシステムは,「技術進歩の連続性」仮定のもとに「安定的」ということが言え,コスト問題が重要な位置を占めることがわかる。 この連続性を仮定したうえで,取引き実行で要求される迅速性や計算機コスト等のコスト問題がセキュリティレベルとのトレードオフ関係にあることが,ネットワークセキュリティ技術応用の現状分析によって明らかにされた。社会。法制度上の問題として,電子署名・認証システムの問題についても分析をおこなった。 さらに,セキュリティシステムの上に成り立っている電子マネーやネットワーク上のマーケティングを考察する上で重要な電子広告(バナ-広告)の現状分析をおこなった。今後予定されている,インターネット上での消費者行動に影響を与える市場情報の分析(意思決定分析),マーケットリサーチのあり方の分析等の基礎となるものである。 本研究は「コンピュータ網における市場情報の伝播について」『福岡大学商学論叢』(第42巻第3号1997年12月)においてまとめられた。
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