研究概要 |
平成9年度については、株式市場全体に共通する確率変動(マーケットファクター)とマクロ経済変数との関係について資産価格評価の立場からの分析を行った。特に1)鉱工業生産,賃金所得,金利期間構造,倒産件数変化率などの状態変数の国内総生産,民間最終消費支出に与える影響,2)状態変数による将来の経済状態の予測可能性,そして3)推定された経済アクティビティーと予測不可能な要素(将来の不確実性,条件付きボラティリティー)により株式超過収益率を説明することを試みた。 実証結果として日本市場において,過去の推定経済成長と将来の株式リスクプレミアムとの間に負の相関関係が,将来の期待経済成長とリスクプレミアムの間には正の相関関係が存在することが明らかになった。また将来の経済活動に関する条件付ボラティリティーの増大は,我が国市場では必ずしもリスクプレミアムには結びつかないことを示し,この観測事実について,Abelにより導かれた均衡リスクプレミアム評価式をもとに,投資家のリスク態度との関係についての議論を行った。
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