研究概要 |
本研究は,組立企業の国際部品調達を,近年関心が高まっている環境問題と関連づけて理論的・実証的に考察することを主たる目的とするものであった。一年間にわたる研究を終え,次に示すような知見を新たに得ることができた。 第一に,国際化が進展するとともに,多くの組立企業が国内外の部品企業と地理的な面においても部材の多様性の面においてもより広範に,かつ柔軟に取引関係を構築しようとしていることを確認することができた。 第二に,近年の環境問題に対する関心の高まりをうけて,多くの企業が具体的な取り組みを開始しつつあることが明らかになった。環境マネジメントシステムの国際規格であるISO14000シリーズの認証所得にはじまり,ライフ・サイクル・アナリシスにもとずいた新製品開発,省エネルギー型製造設備の導入,リサイクル・システムの構築,そしてグリーン調達などに代表される取り組みに積極的な部品企業・組立企業が数多く確認された。現在,これらの事例について検討を進めているところである。 第三に,環境配慮型経営が個別の企業レベルにとどまらず,企業間関係のレベルにまで拡張しつつあることが判明した。例えば,グリーン調達の基本方針を打ち出し,部品企業に対して環境配慮型の生産を取引の条件とするなど, 他の取引企業との相互作用が環境配慮志向で急速に発展している。特に,欧米地域にこうした傾向が強く,今後の国際事業展開のためにはこうした動向への対応が否応なしに必要であることが確認された。 以上が今年度における研究成果の概要である。なお,今年度末に各種文献・資料をもとに,組立企業の国際部品調達と環境マネジメントに関するアンケートを組立企業540社に対して発送した。来年度は,その集計結果の分析を主たる課題にしたいと考えている。
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