研究概要 |
現在の日本社会の致命的な側面は、組織のあり方であることは明白であり、日本的組織に欠けているものは、正当性をチェックする能力である。今回の研究では、正当性をチェックするメカニズムを定着化するにあたって障害となる原因を明確にすることを目的とした。いくら学術的なモデルを構築したとしても、それを当事者が使いこなせるとは限らない。なぜかといえば、正当性をチェックするメカニズムが動き出すことで、利害を被る人々が何らかの目にみえない妨害活動をするからである。こうした妨害は、学術的な組織論では確認しえず、組織の当事者へ調査した。 正当性を疑問視するメカニズムを定着化するプログラムとして、まず、規範モデルを構築した。知識社会学、現象学、批判理論という枠組みを用いて、整理した。また、正当性がなぜチェックされないのかというメカニズムをある程度モデル化し、1997年に発覚した一連の金融システムの腐敗の構造を分析した。結果は、Academy of Management,Boston大会で"A phenomenological reasoning in the analysis of corporate crimes and scandals:A study of Japanese business communities"というタイトルで報告した。 規範モデルの実践可能性を達成するために、モデルを形成する概念が組織の当事者にどのように解釈され、実践されうるのか検討するため、企業の当事者に面接調査をした。本学経営学部で開講しているトップ・マネジメント特別講座で講演に応じていただいた企業を中心に、研究への参加者を集い、32名に面接調査をした。 面接で得られた口述データを文書化した。文書化されたデータを内容分析にかけ整理した。その結果、妨害する要因は7つの現象学的エッセンスに収斂されることが判明した。7つのエッセンスとは、「農村人」、「組織の翻訳者」、「明確化は罪」、「よく理解できずに変革をやる」、「社畜化」、「文句を言うな、「普通でありたい」を含む。具体的な研究成果として、Metz,Franceで開催されたthe Euro-Asia Management Studies Association conferenceにて報告した。その後、国際学術雑誌への投稿準備をし、投稿した。
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