本年度は主として国際R&Dマネジメントにおける知識結合メカニズムの類型化を定性データ(インタビュー等による)により行った。第一の側面はR&D関連知識が完成したアウトプットとして結合されるか(output Linkage)あるいは国際共同研究開発のような形で相互作用を経て結合されるか(interactive Linkage)あるいは国際共同研究開発のような形で相互作用を経て結合されるか(interactive Linkageといった区分である。第二の側面は、R&D知識の結合の範囲に関するもので、各ラボ間の知識が少数ブローカーによって結合されるタイプ(Broker Linkage)か、あるいは大多数のメンバー間で共有されるタイプ(Mass Linkage)かといった区分である。更に第三の側面は知識結合のウェートが社外とのリンクにおかれるか(External Linkage)あるいは社内とのリンクにおかれるか(internal Linkage)といった区分である。 以上の三つの側面から整理された知識結合メカニズムの類型がいかなる場合により顕著となるのかを多面的に考察した。これまでの定性データから判明した点は、これらのメカニズムは、以下の三つの条件により少なくとも変化する点である。第一に、諸メカニズムはR&Dの国際化の進展の度合により徐々にoutput Linkageからinteractive Linkageへと、更にはBroker LinkageからMass Linkageへとシフトしていく傾向があるという点。第二に、諸メカニズムは、知識結合の初期における惰性を克服するためにはMass Linkageが、又組織内の反発を克服する為にはinteractive Linkageが、更に知識の現地特有性を克服するにはその両方が必要になるという点。第三に、諸メカニズムは知識マネジメント・サイクルの発展段階に応じ、知識獲得期にはexternal Linkage、知識融合期にはinternal Linkage、そして知識活用期にはinternal LinkageでありしかもinteractiveでMass Linkageをとる、という点が判明した。
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