本研究では高齢化社会において高齢者の雇用と社会参加の場を提供しうる企業組織のありかた探るために、大分県別府市の自動車部品メーカーホンダ太陽(株)による身体障害者と健常者との「異者協働」への取組についての事例研究を行った。平成9年度は、同社のISO9002認証取得プロジェクト、同社が甲南大学経営学部と共同で取り組んでいる学生のインターンシッププロジェクト(夏期2週間の企業研修)、及びレジャー用パワーアシスト車椅子開発プロジェクト(本田技術研究所との共同研究)や車椅子用エンジンパワーユニット開発プロジェクト(NEDO助成プロジェクト)などに焦点を当てて、研究代表者が毎月1回1泊2日の日程で同社を訪ね、経営者・管理職へのインタビュー調査を中心としたイン・デプスな参与観察を行った。 得られたデータのうち、デジタルカメラで撮影した社内資料や試作品などの画像データについてはMOに移植してデータベース化した。オ-ディオテープで録音した同社経営者・社員・関係者の証言などのインタビューデータについては、同社の社内事情に詳しい外部の作業補助者を利用してテキストファイル化した。 年度末に予定していた研究成果の中間とりまとめについては、主たる研究協力者であった山下猛・常務取締役が平成9年9月に急逝されたため、新たに研究協力者となった樋口克己・総務部次長と協議の末、山下常務の逝去で動揺した同社の体制が安定化する次年度に持ち越すこととした。 平成10年度はこれらの研究成果を踏まえて、同社の現場レベルにおける異者協働のためのより具体的な取組内容とその一般化可能性、および同社のそうした先駆的な試みを支えている事業環境や地域社会のありかたなど、よりマクロな構造的要因について、当初の計画通り時間地理学的手法などを用いて研究を継続し、成果のとりまとめを行う予定である。
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