本奨励研究は本年度に於ては、環境問題に於ける交渉のモデル化と、それに基づく「HICAT」の修正を重点的に推進した。「HICAT」とは、従来からの交渉学における事例研究の成果を踏まえた上で構築した、科学的交渉理論のことである。本研究では、「HICAT」を用いたNSSを構築し、環境問題をめぐる紛争の事例分析を行うことを目的としている。 本年度は、まず研究計画のレビューを受けるたけに、交渉のNSSでは第一人者であるカナダWaterloo大学のFraser教授、Hipel教授のもとで「HICAT」に関するセミナーを開いた。その際、本研究を進めるにあたり、次のような指摘を受けた。 1.交渉理論としての精度と、NSS利用者にとっての利便性を両立させる方法を検討する 2.NSSのための交渉理論は、更に簡易化する必要性がある 現在、研究計画レビューで指摘された点を中心にして、「HICAT」の修正を行っている。「HICAT」は、理論としての精度を重視しているため、利用者にとっての使いやすさを犠牲にしている。実用的な交渉理論の構築では、この点に関する改良が最も必要となる。 またシステム構築では、理論の精度を保ちつつ、理論を単純化する必要があり、現在検討中である。具体的には、「HICAT」への、グラフ理論、Robustness分析手法の導入を検討している。
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