本年度は、当初の研究計画どおり、研究課題達成のための基礎理論の枠組みの構築と企業の実務の基本調査を行なった。 理論的な検討では、設備投資の対象である各種先端設備を一種の情報システムと位置づけることからスタートした。このような情報関連の製造設備は、近年の高度な技術進歩により製造状況に関する様々な情報を適時かつ正確に提供し、この情報は、利用の仕方によっては企業に非常に大きな価値をもたらす。したがって、設備投資の意思決定では、このような情報のもたらす価値をあらかじめ計画し、金額的な評価をしなくては正しい設備投資意思決定計算とはならない。ところが、従来は、このような設備のもたらす情報を考慮に入れられなかった。その際、重要なのは、このようにして設備の提供する情報をどのように評価するかということである。つまり、各種各様の情報があるというのではなく、提供される情報を企業の競争力向上情報としてとらえ、どのように利用するのかということをビジョンや製造戦略との関わりで、その経済的な価値を予測しなくてはならない。そのためには、この情報は、製造面では、アクティビティ分析により、様々なアクティビティ不要を明確にし、さらに購買、製造、ロジスティクスという価値連鎖の中で、価値連鎖コスト・収益計算として認識することで適切な投資意思決定計算とすることが可能である。 しかしながら、実務調査によれば、日本企業の特徴である部門や職能間の壁の高さによるものか、各部門としては設備の提供する製造関連の各種情報を活用するものの、全体的な統括は不十分であり、企業全体として設備が提供する各種情報の有機的結合を達成するための戦略的会計システムとはなっていない。
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