近年の情報技術の進歩を利用した高度先端設備では、以前に増して製造段階での各種製造情報を利用することが可能になっている。設備への期待は加工面での正確さやスピードアップのみならず、そのような各種情報が利用可能であることとされているところが見受けられる。 戦略的な意思決定である設備投資意思決定においては、このようにして得られる先端設備の情報システムとしての側面を活用し、資源消費の原因を明らかにするアクティビティ分析を行うことで、その意思決定で、アクティビティ基準キャッシュ・フロー情報としてどれくらいの金額となるかを明確にすることが可能である。そこでは、個々のアクティビィティ情報を個別に利用するのではなく、購買、製造、販売、サポートなどの価値連鎖の有機的な関連を考慮して、ある設備の導入で、製品の製造販売までトータルに完了するために必要と考えられる各アクティビティについて、今後新たにどのようなものが必要になり、一方、どのようなものが不要にすることができるかを長期変動費として検討し、キャッシュ・フロー化する必要がある。このようなABC(Activity-Based Costing)の観点や技法を利用することが、戦略的管理会計のためには、今後ますます重要である。 残念ながら、本年度調査した各種製造企業においては、そのような長期的な変動費と位置づけて、投資によるアクティビティ観点を取って投資効果を検討している企業は見だし得なかった。その結果、調査した企業の現状の問題とされる設備遊休状態の改善には、製造段階で発する情報を販売・ロジスティクス志向製造情報へと変化させ、それが投資効果として実現するような製造戦略を確立し、それが設備投資のキャッシュ・フローとして発生できるような業務体制を構築し、その金額を予測可能にしなくてはならない。
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