本年度は、他の監査人の利用に関する制度面と、監査報告の面についての調査研究を行った。制度面の調査研究は、日米の監査基準の現状及び歴史的経緯を跡づけ、かつ、このような実務がどの程度見られるのかについてデータの整理を行ったことである。まずここから他の監査人の利用に関する問題点の検討を行った。 続いて他の監査人の利用に関する監査報告の面に焦点を当てた調査研究を行った。第一は、他の監査人の利用に関して監査実務の蓄積の豊富な米国の事例の収集を行ったことである。これは、他の監査人を利用した場合の監査報告書の事例を蓄積することで実証研究の基礎的データとなるものである。また監査人の責任分担と言う見地から見ても、他の監査人の利用に関して監査人の間の責任分担がなされるか否かの闘値を調査するための基礎となるものである。 第二は、他の監査人を利用した場合の監査報告のあり方を検討する予備的段階として、監査報告にかかわる広範な文献の収集および検討を行ったことがあげられる。特に監査報告と証券市場との関連を取りあげた実証研究について重点的に行った。この中に他の監査人の利用を取りあげた研究はなかったが、これらの研究は、他の監査人の利用に関しての監査報告から知覚される監査人の責任について利害関係者がどのように知覚するのかについて実証研究を行う際のモデル構築の基礎となるものである。
|