平成10年度は、平成9年度の研究成果を引き継ぎ、(1)4つの伝統的な理論と会計技術移転論との関係について総括的な評価を行うと共に、(2)このような研究を進めていく上での方法論を研究した。前者は、“Epidemological Aspect of Accounting Systems"と題して、後者は、「フィールドワークとしての国際会計研究」と題して報告を行った(アジア太平洋会計国際会議、於マウイおよび文部省研究交流基金研究会、於九州大学)。 会計技術移転論は、フィールドワークによって導かれた仮説の検証を行うことであり、研究の結果会計の国際的な調和化の再定式化であることが確認された。フィールドワークは国際会計研究において理論構築に不可欠であり、その意義は(1)フィールドワークによって現象の多様な因果関係を形成したプロセスを発見できる、(2)フィールドワークによってしか発見できないことがある点に認められる。国際会計研究は、分析者が属する文化圏とは事なる文化圏を研究対象としているため、この手法がなじみやすい。 この方法の特徴は、「仮説がデータベース化され、しかも現場に根差した証拠によって支持される」点にある。しかし、以下のような限界が内在している。すなわち、a.入手可能な記述データから導かれた仮説-質的データによる証拠-仮説の支持という図式が同語反復的になりやすい。b.因果関係を解明する手続きが(1)調査対象の観察にもとづくために、(2)上記のような図式にもとづくために証明としては緩い。C.再定義・再定式化のプロセスは「データの飽和点」に達するまで続くか、現在ある定義や定式と対峙できるような実例が発見できるまで続く。
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