Ohlson(1995)とFeltham and Ohlson(1995)は、割引率が時間にわたって一定な状況で、会計測定と市場評価の関係を明らかにした。薄井(1998)は、これらのモデルを割引率が時間に伴って変化する状況に展開している。ここでは、彼らのモデルの主たるフレームワークである、(1)クリーンサープラス(clean surplus)関係(期末株主資本=当期会計利益-当期配当+期首株主資本)と(2)情報の線形ダイナミックスを保持しながら、より一般的な企業評価モデルが導出されている。 不確実な状況では、会計システムの保守性は、会計的要因と経済的要因に起因する。会計的要因は、超過利益、すなわち、割引率を上回る 利益の成長率の予期されない変化である。経済的要因は割引率の予期されない変化である。経営者が将来の超過利益の成長率がその平均より高い(低い)と期待する企業ほど、平均して、保守的な(攻撃的な)会計政策をとる。つまり、株主資本を株価に比べて過小(過大に)評価する。また、経営者が将来の割引率がその平均より高い(低い)と期待する企業ほど、平均して、攻撃的な(保守的な)会計政策をとる。つまり、株主資本を株価に比べて過大(過少)に評価する。 東京証券取引所に上場する企業250社を抽出し、1990年から1997年の期間について、パイロット・テストを実施した。その結果、超過利益、株主資本利益率、株主資本簿価/時価総額(B/P比率)などの指標が、市場の評価としての株式収益率の違いを説明するのに有効であることがわかった。
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