研究概要 |
代数多様体の小特異点とは,広くは,その特異点解消で,例外集合の余次元が2以上であるものを言うが,例外集合が既約直線の場合を調べることが当面の課題であった.まず,3次元多様体の小特異点については,有理型と種数の高いものがある.種数にも2つの概念があって,例外集合の種数と,特異点解消の構造層の1次直像の次元とがあり,後者のほうが一般には大きい. さて3次元有理型ゴレンシュタイン小特異点については,その広さによってA_1,D_4,E_6,E_7,E_8-5,E_8-6という6種類に分類される.A_1型はxy+zw=0という特異点に解析的に同型である.D_4型は例えばw^2+y^3-xz^3-x^3y+λ(xy^2-x^4)=0など加算個のタイプがある.E_6型は,今年度の研究で発見した例であるが,x^5+x^4y+3x^2yz-xy^3-xzw+z_3-w^2=0などがある.E_7型以降の具体的な解析的例は,残念ながらまだ発見されていない. さて,もうひとつもの関心として,これらの等特異性変形(equi-singular deformation)がどうなるのか調べる必要がある.A_1型は変形しない.D_4型は,例えば上の例はλが変形空間をパラメター付け,1次元であるが,一般には,次元のことなる可算個のファミリーを持つことが分かった.E_6型についてもほぼ同様であることが明らかにされた. ゴレンシュタインでない有理特異点については,今年は進展がなかった. さて,種数1以上の小特異点については,その存在範囲がよく詳しく分かった.ただ,楕円型に関しては,もうすこし詳しく調べる価値がありそうである. また,4次元のフリップ型特異点を構成するのに,3次元小特異点の構成方法が拡張的に利用できることが分かったのは大きな進歩である.
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