研究概要 |
ヘテロティック超弦理論と"双対"対応を持つCalabi-Yau多様体は、周期積分の満たす微分方程式とその解に多くの"良い"性質を持つことが実験的に知られている。今年度の研究では、そうしたCalabi-Yau多様体のうちで、abelian fibrationを持つSchoenのCalabi-Yau多様体について調べ、「プレポテンシャルと呼ばれる関数が、例外型格子のテ-タ関数をはじめとする保型形式によって記述される」という結果を得た(斎藤正彦(神戸大),J.Stienstra(Utrecht大)との共著)。 プレポテンシャルは、Gromov-Witten不変量の生成母関数である。個々の不変量は多様体の有理曲線の数と関係する位相不変量であるが、これを母関数としてまとめて扱うとそこに保型性が現れてくるのである。SchoenのCalabi-Yau多様体はそのような典型的な例で、ミラー対称性を用いてプレポテンシャルを求めることが可能である上、個々のGromov-Witten不変量の計算も可能と期待され類似なモデルの研究の上で、大変良い例になる。この例を手がかりに一般の退化・転移を示すCalabi-Yau多様体のGromov-Witten不変量とプレポテンシャルの解析が進んでいる。 他方、最近有理楕円曲面を含む3次元Calabi-Yau多様体(のプレポテンシャル)が、有理楕円曲面上のN=4超対称ゲージ理論のモジュライ空間の位相不変量と一致することが報告されており、我々の結果もこれと大変良く一致し興味深い。この点については次年度の研究に引き継ぐことにする。
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