研究概要 |
量子群の理論とは、リー群やリー代数の概念の変形,もしくは拡張として1985年前後に導入された新しい数学的対象のことである。1990年頃発見された結晶基底 基準的基底)の理論は量子群の表現論、可解格子模型などに大きな影響を及ぼした。この理論の特色は、古典的なリー代数の表現論では考えることができない結晶化-つまりパラメーターのqを0として考えることにより複雑な現象を簡単化し種々の具体的計算を可能にした。私はリー代数がsl_2^^⌒という最もアファイン・リー代数の場合に変形された量子群のレベルが0の部分の結晶基底の道空間表示をもとに、結晶グラフとしての各連結成分のパラメトリゼーションやその具体的な表示を記述した。さらに、変形された量子群の結晶基底上にワイル群が作用していることと両側結晶の構造が入ることを利用して、ピーター・ワイル型の分解の存在条件を与え、上で述べたsl_2^^⌒の場合にその条件が満たされていることを示しピーター・ワイル型の分解の具体的表示を与えた。さらに、ランクが一般のsl_n^^⌒の場合に拡張に関して考察を行なった。アファイン・リー代数をより一般にすれば、既約成分の構造は、ある種の物理模型のハミルトニアンのq=0での固有空間の記述に役立つものと期待される。その準備段階として両側結晶の道空間表示についてsl_2^^⌒の場合と異なる表示を開発し道空間表示の左(右)半分にあたる量子群の部分代数の結晶基底を一般のカッツムーディー・リー代数の場合に表示する問題に取り組んでいる。この研究の結果に対して左側と右側のテンソル積を考えることで、変形された量子群の結晶基底の具体的な表示を与えることになる。
|