研究概要 |
本研究の目的は,有理数体Q上定義されたアファイン等質空間X=G/Hにおける数の幾何の理論の構成とHardy-Littlewood性について調べることである.本年度は,Hardy-Littlewood性について調べることにより次の結果を導くことができた. 1.Hardy-Littlewood等質空間の一般的諸性質.とくにmean value theoremを用いることにより次の2つの性質を証明することができた.(1)XがHardy-Littlewood多様体で,かつ代数群GとHが自明でないQ-有理指標を持たない場合,Xの密度関数のG(A)-軌道上の平均値はHの代数的基本群により具体的に記述できる.(2)さらに(1)の仮定に加えてGが強近似定理をみたすならば,密度関数そのものがHの代数的基本群により表せる. 2.Hardy-Littlewood性はX上の整数点の個数の漸近評価から導かれる概念であったが,それを一般化し,S-整数点の個数の漸近評価から導かれる概念として,S-Hardy-Littlewood等質空間を定義した.これについて1と同様の諸性質を証明することができた.またGがQ上非等方的群の場合に,XがS-Hardy-Littlewood等質空間であるための十分条件を与えた 2の結果は,金沢大学理学部の森下昌紀助教授との共同研究のもとでなされた.これらの成果は,津田塾大学第3回整数論シンポジウム(於津田塾大学),日本数学会秋季総合分科会代数分科会一般講演(於東京大学),「保型形式と整数論」研究集会(於京都大学数理解析研究所)で発表された.
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