高余次元境界値問題の研究においては、偏微分方程式系の解の延長問題を研究してきた。すなはち、楕円型方程式系の解の定義域が自動的に延長するという、柏原-河合の接続定理をより一般の方程式系へ拡張するプログラムである。これについては、当研究者の導入した新しい層を用いることで、一般理論をつくることに成功した。今年度は、当研究者が予想した最も広いクラスの系にまで現在までの結果を拡張することができ、論文として掲載されることになった。近年発達した層のマイクロ台をカットする手法が、この予想の解決に役だった。また、佐藤超関数解や実解析解だけでなく、distribution解や無限回微分可能な関数での解の接続についての結果も、方程式系にある程度の付帯条件を課せば同様に得られることがわかった。これは、最近のD'Agnolo-SchapiraらによるD-加群の積分変換の仕事に使われた補題を、別の問題に応用したものであり、distributionにおけるsystemにたいする初期値問題についてのD'Agnolo-Toninの結果の境界値問題versionと考えられる。さらに、高余次元の境界に沿って非特性的でない、確定特異点的な場合については、方程式系=D-加群に境界に沿ったモノドロミ-によって解の延長が統制されるという、一結果を得た。これらの結果は目下投稿中である。 以上の研究成果の他、近年フランスを中心に盛んに研究されているD-加群の積分変換や指数定理への応用、不確定型のsystemの解の漸近展開の理論について勉強するために、図書を購入したり、他の研究者と研究連絡をおこなったりした。また研究成果の発表のために、研究集会へ出かけたりした。
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