1 普遍ベクトル束の存在問題:ベクトル束のモジュライは一般には普遍ベクトル束を持たない。つまりモジュライ関手は表現可能ではない。そこでいつ普遍ベクトル束が存在するか?というのは興味深い問題である。まず底空間が曲線の場合、Ranananによりこの問題は完全にとかれている。底空間が一般の場合、存在のための十分条件は丸山をはじめ向井、Drezetによって得られている。一方Le-Potier、Drezetはこの十分条件が必要条件でもあることを底空間についての適当な条件のもと示した。この適当な条件とは曲面の場合、幾何学的種数が0ということである。 そこで今年度は一般の曲面の場合にも彼らの十分条件が一般には必要であることを階数2のベクトル束のモジュライ空間のネロン-セベリ群を捩れを除き決定することにより示した。 2 K3曲面上のベクトル束のモジュライ:適当な条件のもと、K3曲面上のベクトル束のモジュライのコンパクト化は単連結な超ケーラー多様体になることが知られている。この多様体の周期を決定するという問題は興味深い問題であり向井、O'Gradyの結果がある。私は、例外ベクトル束による鏡映変換を利用することにより、彼らの結果を一般化した。特に多くの場合にモジュライ空間の周期を決定した。
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