正標数代数多様体上のp進局所系は過収束F-アイソクリスタルと呼ばれるリジッド解析空間の意味で標数0へ持ち上げた多様体上のフロベニウス構造付きの微分加群の層で表され、そのド・ラム複体のコホモロジーとしてリジッド・コホモロジーは定義される。当研究では、正標数代数多様体のリジッド・コホモロジーの有限性(有限モノドロミー予想)に関する幾つかの結果を得た。以下、主な結果を記す。 A.J.de Jongのアルタレイションの理論を用いると、F-アイソクリスタルの射に関するTate予想が、完備離散付値体上のTate予想に帰着される。基本群に関する純性定理と完備離散付値体上の有限モノドロミー定理とを合わせると、一般の代数多様体上で過収束ユニットルートF-アイソクリスタルの局所有限モノドロミー性(generically finite monodromy)を得る。 局所的な場合に、正規交叉因子に沿って対数極を入れた係数付きド・ラム複体と交叉因子を除いた部分へ制限した複体が導来圏の中で同型であることを示した。この対数的Monsky-Washnitzerコホモロジーに関する比較定理は、P.Deligneによる複素多様体における比較定理のリジッド解析版にあたり、大域的関数層と局所的関数層との比較をすることに得られた。その結果、係数付きリジッド・コホモロジーのGysin同型(コホモロジー的純性)が得られた。さらに、P.Berthelotによる方法で、過収束ユニットルートF-アイソクリスタル係数のリジッド・コホモロジーの有限性やPoincare双対性を得た。
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