研究概要 |
以下、本稿ではζ(s)でリーマンゼータ関数、ζ^<(k)>(s)でそのk階導関数(k=1,2,…)をあらわす。本年度の研究成果を以下の三項目に分けて述べる。 i)ζ^<(k)>(s)の二乗平均の誤差項E(T;k)に対するAtkinson型公式の確立 本年度はこの課題を主な目的としたが、今のところ予備的な成果として、一般化された約数関数d^<(h,k)>(n)=Σ_<lm=n>log^hllog^km(h,k=0,1,2,…)に対するVoronoi型公式が得られているものの、最終目標であるE(T;k)に対するAtkinson型公式の確立にまでは至っていない。これは、本来のAtkinson公式の導出の際には現われなかった種々の技術的困難が生ずるためである。今後は上で得られた成果をもとに、E(T;k)に対するAtkinson型公式の確立を目指したい。 ii)ζ^<(k)>(s)^2の近似関数等式の導出とその剰余項R(s;k)の確定 この課題について、近似関数等式の確立の基礎となるζ(s-a)ζ(s-b)(a,bはパラメタ)のTitchmarsh型級数表示の導出はほぼ完了した。来年度はこの級数表示をもとに、ζ^<(k)>(s)^2の近似関数等式を証明すること、そしてその剰余項R(s;k)をJutila[Quart.J.Math.Oxford(1986)]によるsmoothing integration techniqueを援用することで十分満足できる形に評価したいと考えている。 iii)重みつき積分によるζ(s)の二乗平均へのアプローチ ζ(s)の二乗平均を扱う際、重みつき積分∫^∞_<-∞>|ζ(σ+i(T+t))|^2e^<-(t/Δ)^2>dt(Δ>0はパラメタ)から出発する方法が有効であることが知られている。この方法の利点は、情報の精密さは多少犠牲となるが、技術的な困難を含んだAtkinson公式を経由することなく二乗平均の誤差項の上からの評価が可能となることである。実際、本研究者は、名古屋大学・松本耕二氏とともに、この方法をディリクレL関数の二乗平均の研究に応用し、その成果を共著論文"A weighted integral approach to the mean square of Dirichlet L-functions"として欧文学術雑誌に投稿準備中である。
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