以前我々がA^<(2)>_<2l>型アフィンリー環のウエイトベクトルの研究で用いた組合せ論的手法を、新たにD^<(2)>_<l+1>型の場合に応用し、この場合のウエイト空間の様子もstrict partitionの組合せ論によって記述できることを見出した。一般に、D^<(2)>_<l+1>のbasic表現のウエイトベクトル(ウエイト基底)はSchurのQ函数Q_λ(t)(λはstrict partition)によって与えられる。ここでは、λを変えるとウエイトがどのように変わるかを組合せ論的に記述することで、各Q函数のウエイトの特定を行った。 さらにA^<(1)>_1がD^<(2)>_4へ埋め込めるという事実を用いて、先のウエイトベクトルとQ-函数の関係からA^<(1)>_1のbasic表現の新たな実現を得た。通常知られている実現ではウエイトベクトルはSchur函数であるのに対し、この実現ではQ-函数で与えられるが、特に極大ウエイトベクトルに対しては、ウエイト空間が1次元であることを使うことで、これら2つの対称函数を結ぶ関係式が導かれた。 A^<(1)>_1のbasic表現は対称群のp=2でのモジュラー表現と、またQ-函数は対称群のスピンモジュラー表現とそれぞれ密接な関係にある。このことからこのA^<(1)>_1の実現というのは、対称群のスピンモジュラー表現の既約成分と通常表現のモジュラー表現のそれとがp=2では同じになるという事実の反映であるということがわかった。ここでも、研究目的で述べた「対称群のスピンモジュラー表現のアフィンリー環の表現論からの視点での扱い」という特色が生かされた研究結果となった。
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