一般にアフィンリー環D_<l+1>^<(2)>の基本表現のウエイトベクトルはシューアのQ-函数と呼ばれる対称函数によって表される。本研究では、Q-函数をパラメトライズするstrict partitionを変えたときのウエイトの変化を組合せ論的に記述し、各Q-函数のウエイトの特定をおこなった。 ここで得られた結果と「A_1^<(1)>がD_4^<(2)>に埋め込める」という脇本実氏の結果を併せて考えることで、A_1^<(1)>の基本表現の多項式環上の実現としてはこれまで知られていたものとは異なるものを得た。これは、標数2の体上では対称群の通常表現とスピン表現は同じになってしまうという事実の反映であった。2つの実現は簡単な変数変換で移りあうが、Q-函数を変数変換したものを対称群の2-モジュラー指標(ブラウワー指標)から生成した多項式で展開したときの展開係数はベンソンが得たスピン表現の分解行列であることもわかる。特に極大ウエイトベクトルであるQ-函数の場合には、この変数変換により階段型のpartitionで定められるシューア函数に移る。もともとこの変数変換はアフィンリー環の表現の実現をつなぐための形合わせ(頂点作用素の形を合わせる)として得られていたものだが、スピン表現の観点からの表現論的な意味も今回はっきりさせることができた。 こうした結果をふまえて、2-モジュラースピン表現の分解行列を詳しく調べてみたところ、分解行列は各ブロックごとに単因子が2の巾になり、その値はブロックのウエイトで決まっていることが観察された。単因子が2の巾になることは北大の田口・山田両氏により解決されているが、巾の値の決定は今後の課題である。アフィンリー環のウエイト空間の構造との関係からのアプローチを試みたい。
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