今年度は一般森田・マンフォード類の様々な性質の解明に終始した。予想外に難しかったが、同時に様々な数学と深く結び付いていることも明らかになってきた。 正規第3種アーベル微分の擬等角変分を計算し、その3乗のファイバー積分を求めることよって、拡大ジョンソン準同型の微分形式表示を得た。結果としてこのねじれ係数微分形式(Harris-Pulteの)点付き調和体積の第1変分に等しいことがわかった。点なしの調和体積の第1変分はB.Harrisによって既に求められているが、点付きのそれはここで初めて計算された。森田茂之の処方箋にしたがって拡大ジョンソン準同型から普遍リーマン面の相対接束の曲率形式と第1森田・マンフォード類の微分形式表示が得られる。曲率形式の2乗のファイバー積分と後者の微分形式はコホモロガスであるが、微分形式としては別物であることがわかった。さらに、ここで得られた曲率形式とArakelov計量の曲率形式の差はさきほどの差の(2-2g)^(-2)乗倍に一致することがわかった。これらの差を表わすポテンシャルは、概念的には3次元多様体のCasson不変量やリーマン面のFaltings不変量に関係しなければならない。しかし、今年度これを具体的に解明することは出来なかった。来年度の課題である。 自由群のマグナス展開を代数的に整理しなおすことによって自由群の自己同型群上の「一般森田・マンフォード類」の構造を明らかにした。これによって写像類群の一般森田・マンフォード類の縮約公式の代数的別証を得た。自由群の自己同型群の安定コホモロジーとの関連の解明が来年度の課題である。 ファーバー予想への一般森田・マンフォード類を使ったアプローチのために計算機を購入し計算を始めた。
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