3次元コンタクト多様体論への応用を念頭において、4次元シンプレクチック多様体上のモノポール方程式について研究した。 特に4次元シンプレクチック多様体であって3次元コンタクト多様体を凸なエンドとするものをとり挙げ、コンタクト=ホモロジーに値をとるようなモノポール不変量を構成することを試みた。 その結果、上の目的を達成するまでには至らなかったものの、このような4次元シンプレクチック多様体において、クロンハイマー=ムロウカの定義したモノポール不変量とグロモフ=ウイッテン不変量が等価であることが示せた。クロンハイマー=ムロウカの不変量は、私の立場からみると、コンタクト=ホモロジーの最低次数の値を読みとることに相当するとおもわれる。 この主結果は、閉4次元シンプレクチック多様体においてタウベスにより示されたモノポール不変量とグロモフ=ウイッテン不変量の等価性の極めて自然な拡張であるが、その証明にあたって、非コンパクトな多様体における大域解析学上の技術的困難を克服する必要があった。 主結果の応用として、3次元球面の標準的なコンタクト構造を有限群の自由な作用でわってえられる3次元コンタクト多様体を考えた時、それを凸な境界として持つ4次元シンプレクチック多様体の位相に関するある制約を得た。すなわち、そのインターセクション形式は負定値であり、カノニカル直線束は自明である。鍵となる観察は、このようなエンドにはこのシンプレクチック形式とコンパチブルなハイパー=ケーラー構造がはいる事である。この結果は代数幾何における有理特異点の理論の、シンプレクチック幾何における類似であるといえる。 また、凸なエンドが曲面上の主円周束と実半直線の直積であり、かつシンプレクチック形式のエンドへの制限が、この主円周束上の正曲率の接続(これはコンタクト構造になる)のシンプレクチック化になっている時、非自明な境界条件を持つモノポール不変量の定義が可能であることが観察できた。
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