研究代表者は、平成9年3月末、数理解析研究所に於いて行なったサーベイの中で、非可換モノポール方程式のモジュライ空間に関する解析的基礎理論とそのウィッテン予想との関わりを解説したが、その議論の正当性を確認するために、正則楕円曲面についてウィッテン予想の一部を非可換モノポール方程式のモジュライ空間から直接引き出すことを試みた。しかし、その計算結果には不要な項があり、既に確認されている別の計算方法の結果とは一致しなかったが、その後、その誤差項は正則楕円曲面の特殊事情により互いに相殺することがある論文に掲載されていることを知った。 これは、基礎的理論の正当性を支持しているということでは大きな進歩であったが、当初、計算間違い程度と考えていた誤差項が単純なものではなく、もっと微妙な問題と関わっていることを知らされた。更に、この事実は、正則楕円曲面以外の4次元多様体、例えば、一般型代数曲面に対しては、深刻な問題をもたらす。なぜなら、知られている計算結果から、誤差項の相殺現象が起こらない、或は、起こるとしても、かなり複雑になっていることが推測されるからである。このような新しい現象が起こる理由は、モジュライ空間がコンパクトでないからであり、それは、コンパクト化した時に現れる特異点近傍の様子が、いままで知られている類似例と比較して、かなり複雑であることを意味している。現時点では、どの程度複雑であるかを理解するための事例を発見していない。 そこで、モジュライ空間のコンパクト化が具体的に構成可能と思われるK3曲面について、もう一度、調べなおしてみることからその解析を始めたいと考えている。
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