平成9年度はユークリッド平面内の等辺多角形のなす空間のホモロジーを決定したのだが、平成10年度はユークリッド空間内の等辺多角形のなす空間のホモロジーを決定することができた。また、この空間のsymplectic volumeを計算することもできた。以下ではその概略を説明する。 1. M_nでユークリッド空間R^3内の等辺多角形のなす空間をあらわす。M_nのトポロジーについては、nが奇数のときは滑らかな複素多様体であり、nが偶数のときは特異点があることが報告者により1996年に証明されていた。なおM_nは球面上の半安定点のなすモジュライ空間と同一視されることに注意する。 さて、nが奇数のときはM_nの有理係数ホモロジーはKirwanにより決定されていた。この計算が可能な本質的理由はM_nが特異点を持たないことである。しかしnが偶数のときは特異点のため、上の方法は適用されない。そこで平成10年度は全く新しい方法により、nが偶数のときのM_nの有理係数ホモロジーを決定した。 2. M_nについて以下のことも研究した。nは偶数、奇数何れでも良いものとする。 M_nはsymplectic manifoldであることがKapovich-Millsonにより知られていた。ω_nをsymplectic formとする。M_nのsymplectic volume ν_n=∫_M_nω^<n-3>_nの決定は様々な研究者の試みにも拘わらず、部分的な結果しか得られていなかった。そこで平成11年度のもう一つの成果として、υ_nを完全に決定した。証明はDuistermaat-Heckmanの定理を用い、R^<n-3>内のpolytopeの体積を計算することに帰着させるという、新しい視点から行われた。
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