本研究は「リーマン多様体上のどのような関数が、その共形類内でスカラー曲率として実現され得るか?」と言う問題を定式化した、いわゆるスカラー曲率の方程式を特別な場合として含む、あるクラスの非線形二階楕円型偏微分方程式に関する研究であり、特に、コンパクト・リーマン多様体から閉部分多様体またはより一般の閉部分集合を除いた部分領域の場合の正値解のなす空間の構造について調べている。この設定は、除かれた集合を特異点集合と見なすことにより、主としてユークリッド空間の余次元一のなめらかな境界を持つ有界領域について研究されて来た楕円型特異境界値問題を、より一般化した形で含んでいると考えられる。この点に注意して、今年度の研究では、方程式の解の存在、挙動、一意性、非存在等について、これまで、特異点集合の次元によって(余次元が一、二、三以上で)異なる形で与えられて来たいくつかの命題について、統一的な証明を与えた。また、一部の命題については、特異点集合付近での挙動が混合型である場合や、特異点集合がなめらかでない場合にも命題を拡張した。これらの結果は、論文「Uniqueness of solutions of an elliptic singular boundary value problem」、「Nonexistence of subsolutions of a nonlinear elliptic equation on bounded domains in a Riemannian manifold」、論説「開Riemann多様体上のスカラー曲率の方程式」等において発表する予定である。
|