結び目理論においてAlexanderの定理とMarkovの定理はとくに重要な役割を果たしている。2次元の結び目についてもこれらの定理の一般化が成立する。特異2次元絡み目は特異2次元ブレイドとしての表示を持つ。当研究において、任意のコード付き特異2次元絡み目はブレイド表示可能であることを示した。ブレイドを利用して特異2次元絡み目を自明な特異2次元絡み目に変形するようなジュネリック正則ホモトピーを構成するアルゴリズムが存在するが、うまくブレイド表示を選べば、最小のジュネリック正則ホモトピーを実現できることがわかった。これにより、2次元結び目の(正則ホモトピー)結び目解消数の評価を2次元ブレイドの平面上のダイアグラム(チャート表示)から求めることが可能となる。同様のことが、1ハンドル接続操作についても成立する。ブレイド表示を利用して特異2次元絡み目を自明化するアルゴリズムが存在するが、うまくブレイド表示を選べば、最小回数の1ハンドル接続操作であるような変形プロセスを実現できることがわかった。これにより、2次元結び目の(コボルディズム)結び目解消数の評価を2次元ブレイドのチャート表示から求めることが可能となる。 2次元結び目の正則ホモトピー結び目解消補題を利用して、2次元結び目について有限型不変量(Vassiliev不変量)の概念を定式化した。またVassiliev不変量の構成するベクトル空間の次元は1次元であることがわかった。一般の特異2次元結び目についてはある3つの基本不変量により、Vassiliev不変量が決定されることも証明した。特異2次元絡み目についての有限型不変量(Vassiliev不変量)の定式化は現在のところ未解決である。
|