私は次の2つのことを研究目的、計画とし、研究を進めてきた。一つはトンネル数1種数1結び目の完全決定(これを研究Aと呼ぶ)、もう一つは結び目に張るザイフェルト膜を基準にしたEssential laminationの構成とそのヘガード分解との関係を明らかにすること(これを研究Bと呼ぶ)である。 研究Aについては、論文'Genus one knots with unknotting tunnels and unknotting operations'においてトンネル数1種数1の結び目の補空間の性質を調べ、その結果を用いることでnon-simpleという条件下では完全に決定することが出来た。これについては、論文'Tunnel number one genus one non-simple knots'というタイトルで、Tokyo Journal of Mathematicsに発表される。よって残るケースは、simpleという条件下でどうなるか?ということであるが、これに関しては未だ様々な障害があるので、その研究のfirst stepとして、tunnel number 1 linksのtangle decompositionを詳しく調べている状況である。これについては、研究集会「結び目理論」において'On tangle decompositions of tunnel number one links'というタイトルで研究中間報告を行った。 研究Bについては、実際にザイフェルト膜を基準にしたEssential laminationを構成し、それに対応する結び目がProperty Pと呼ばれる性質を持つことを示すことが出来た。この成果については、「三次元多様体上のEssential laminationとその応用」というタイトルで第44回日本トポロジーシンポジウムにおいて発表した。次のstepについては現在進行中であるが、特に、平成10年1月に奈良女子大学で行われた研究集会において、この分野の第一人者であるNorth Texas UniversityのBrittenham博士と有益な情報交換が出来た。これをもとに、新結果が得られると今現在研究中である。
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