研究概要 |
量子群から定義される結び目および3次元多様体の不変量の幾何学的性質はまだ良く分かっていないが,最近発見されたVassiliev型不変量すなわち有限タイプの不変量との関係で見ると,その幾何学的性質が分かる可能性がある.この研究ではそのことを踏まえてこれらの不変量の幾何学的性質を導くことを一つの目標としている.また,空間内に埋め込まれた1次元複体としてのグラフの位相的不変量についても,同様の考察を行うということも研究目標の一つである。 研究成果としては,次の事柄がある. 1.SU(n)に付随した結び目の量子不変量の,Linear Skeinを用いた組み合わせ的な再定義を得た.これにより,不変量の幾何学的意味を探りやすくなった. 2.研究目標とは少し異なるが,双曲的3次元多様体と,グラフ理論で言う「4色定理」との関連を指摘した.これは,双曲幾何のグラフ理論への応用があることを意味する. 3.空間グラフの正則変形の不変量を補正し,完全な位相的不変量とするために必要な,捻り数というものを定義した.また,それが定義可能である十分条件として,グラフが2重サイクル被覆をもつことをあげた.「全ての切断辺を持たないグラフは2重サイクル被覆を持つ」という命題は未だに証明されていない未解決問題である. 4.有限タイプの結び目不変量は結び目解消数が1の結び目で全て実現できるという定理を得ることができた.この成果はまだ出版されていない.
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