研究概要 |
本年度は反復的曲面束の観点から写像類群と写像類群に密接に関連するTorelli群,Artin群,Coxeter群を主に群のコホモロジーの手法を用いて研究した。以下に具体的に述べる。 ・asphericalな多様体上の曲面束で切断をもつものに対し全空間の基本群の自由分解をホロノミー写像と自由微分を用いて記述する方法を構成した。これにより上のような曲面束の全空間の局所系を係数とするホモロジーとコホモロジーの計算が可能となる。応用として拡張された写像類群のコホモロジーの分解の自由分解のレベルでの記述が期待される。 ・Torelli空間とTorelli群は曲面束、レベル構造を持つRiemann面のモジュライ空間、三次元多様体の有限型不変量などと関連する重要な研究対象である。とくにそのコホモロジーは曲面束の二次特性類とみなされる。本研究ではTorelli空間の有理係数コホモロジーが一般には無限次元であることを証明した。これは種数が2または3の場合のMessらの結果の一般化になっている。これより曲面束の二次特性類は無限個存在することがわかった。今後はこれら二次特性類の幾何学的な意味付けが望まれる。 ・Coxeter群のコホモロジー環から有限位数の放物的部分群のコホモロジー環の射影的極限へ自然な環準同型がF-同型(核と余核が冪零元のみからなる準同型)であることを証明した。またCoxeter群に同伴する複体が閉多様体の単体分割になっている場合にその閉多様体のEuler数とCoxeter群の有理Euler数と関係を与えた。応用としてある種の純Artin群のコホモロジーが無限生成であることを証明した。写像類群の部分群のコホモロジーへの応用が期待される。
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