本年度は主に向きづけられた閉曲面の周期的微分同相写像と曲面束の特性類との関係、および曲面束のmod 2特性類(とくにmod 2森田-Mumfrod類)の構造について研究した。 1. 閉曲面の周期的微分同相に対し、その写像トーラスのη不変量、G-符号数、および第一森田-Mumford類の関係を明らかにした。とくに写像トーラスのη不変量のG-符号数による表示を見い出し、また閉曲面の周期的微分同相(あるいは写像類群の有限部分群)の第一森田-Mumford類の消滅が写像トーラスのη不変量の整数性で特徴づけられることを証明した。さらに閉曲面の周期的微分同相の奇数次の森田-Mumford類がG-符号数とLefschetz数で決定されることを発見した。一方で偶数次の森田-Mumford類はG-符号数とLefschetz数のみでは決らないことを示した。 2. 写像類群のmod 2森田-Mumford類の消滅について種々の結果を得た。とくに(1)種数が2または3の写像類群(2)写像類群の有限部分群(3)レベル2の写像類群に対してはそれらのmod 2森田-Mumford類が消滅することを証明した。また一般にmod 2森田-Mumford類が幕零であることを証明した。これらの結果を用いて曲面束の同境に関して種々の結果を得た。とくに種数2の曲面束あるいは自明な同伴Hodge束をもつ曲面束の全空間が有向零同境であることを証明した。 3. 種数7以上の有向曲面のTorelli群の有理コホモロジーが穴(puncture)と境界成分の個数によらず常に無限次元であることを証明した。これは昨年度に得られた結果を拡張したものである。
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