平成10年度は、計量と両立する接続を持つ多様体の幾何に関連して、主として(i)情報幾何において、確率分布の空間に与えられる幾何構造、(ii)3ないし4次元のアフィン空間における、良い性質をもつ曲面の具体例の構成、の二つの項目についての研究を行い、次のような研究成果を得た。 1. (無限次元)バナッハ空間への余次元1の半はめ込み写像のアフィン幾何を構築し、情報幾何において確率分布族に与えられる幾何構造は、いずれもこの一般論を具体例に適用することで得られることを示した。これにより、確率分布の無限次元族に対する情報幾何について確固とした基盤が与えられただけでなく、今後、確率分布族上に導入し得る幾何構造についての一つの指針が与えられたものと考えられる。 2. 3次元アフィン空間のアフィン ガウス・クロネッカー曲率が一定な曲面について、それが計量的である(その曲面のガウス曲率一定になるような、全空間の内積が存在する)ための簡明な必要十分条件を与え、それらの曲面の間のバックルンド変換をアフィン曲面論の範疇で記述した。また、非計量的な曲面を具体的に構成するための一般的な手順を与え、それを実際に遂行することにより、今まで文献などではあまり知られていなかった具体例を構成した。 3. 4次元アフィン空間の自己双対な極小中心アフィン曲面に対する表現公式を与え、そのような曲面が豊富に存在することを示した。さらに、この結果を用いて、クリフォード輪環面や二次曲面などの自己双対極小中心アフィン曲面の典型例を結ぶ変形族を具体的に構成した。
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