前年度の研究・調査の結果をもとに、1.群作用を持つシンプレクティック空間(ハミルトン的空間)の大域的構造と、自然なディラック作用素の同変指数から得られる情報の相関、2.ラグランジュ的トーラスによる束構造の下で見られる局所化現象と複素解折的(ケーラー的)な情報の相関、に焦点を当てて研究・調査を行なった。 まず1.に関して、前年度の研究実績報告書において述べた命題「4次元ハミルトン的S^1空間の同変指数(の列)は、その空間の同変ハミルトン型を完全に特徴づける」が不成立であること、実際、証明のギャップを考察することにより反例を多種構成することができること、が判明した。しかしながら、より一般のハミルトン的空間に対して、前述の同変指数の列をその一部として含むより自然な不変量を、同変K理論的特性数の列として構成することができること、さらにはこの不変量は、同変ハミルトン的微分同相よりも弱い「同変ユニタリ・ハミルトン的同境」なる(より弱い)同値関係に対する不変量であること、が明らかになった。逆に、同変K理論的特性数の列がこのような同境類を完全に看破しているかどうかが自然に問題となる。これについて、ある種の仮定の下(例えば上記の4次元ハミルトン的S^1空間の場合等)での実験結果を学会等において発表した。なおこの問題は、h原理と呼ばれる一般原理を群作用の下で考えることにも関わっている。これらについては、プレプリントEquivariant characteristic numbers and Hamiltonian cobordismを現在準備中である。 一方2.は、深谷賢治氏によるホモロジー的ミラー対称性の研究に現れた多重テータ関数と、シンプレクティック・トーラスの各種偏極による幾何学的量子化の間の対合(これについては本研究代表者が数年来考察してきた)の関連が興味深いが、いまだ調査の段階を出ない。今後の課題としたい。
|