研究概要 |
本年度では特に空間1次元において、今まで全く予想もされていなかった幾何学的方程式の解の特性が明らかになった。それはある条件のもとで爆発する解について、爆発するスピードやその領域が、与えている初期値を少しでも変えると多大な影響を受けるということである。一般の方程式に対する最適性で良く登場する方程式□U=F(U)タイプでは、爆発が起きているときはそのスピードはこれに対応する常微分方程式U=F(U)と同じスピードであり、領域はいわゆるspace-likeと呼ばれるものでその拡がり方は波のスピードより速いことが知られていた。これに対し幾何学的方程式□U=U^2_t-U^2_xでは必ずしもスピードはU=U^2とは同じにならず、また領域もnull(一点のみで爆発)の可能性があることが明らかになった。更に初期値の与え方によっては□U=F(U)のときと同じ現象が見られることがわかった。このことは「爆発領域がspace-likeになる」必要十分条件が「爆発スピードが対応する常微分方程式のものと同じになる」ことであるという極めて重要な特徴付けを示している。以上の成果をあげるのに成功した要因はUt+Ux,Ut-Uxを新たな未知関数とみて方程式を2本のシステムに書き換えたことを起点として、非線形変換V(t,x)=e^<-u(t,x)>を導入したことにある。これにより方程式は線形□V=0になり爆発点がゼロ点に変換され解析が容易になった。
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