幾何学的波動方程式を解析するには方程式をシステム化する必要がある。又、一般論を扱う前に半線形波動方程式系を解析することは不可欠である。当研究の保年度における成果では、半線形の理論で単独のときには見つからなかったシステム特有の現象を解明することができた。それは次のようなものである。解析する空間は3次元である。現象の本質を明らかにするため2×2のシステムに限定する。問題は2つの未知関数が互いに相手方の非線形成のみで支配されているとき、単独の場合と同様の結果が得られるかというものである。結論は2つの非線形性が同じときは単独と全く異質なものとは出てこないが、少しでも違うとシステムの影響が出てくる。それは単独では解が構成できない程非線形性が低くてももう一つの方程式の非線形性が高ければ、時間大域解が構成できる。更にその2つの非線形性の臨界値は3次の関係でも記述されるというものである。又、詳しい解析を行うことにより、大域解が構成できないとき局所解がどの位長い時間存在できるかといういわゆるlifespanの完全な評価を与えることができた。結果はMathematical Reseaech Note #98-004(Int.Math.Univ.ut Tsukuba)にまとめられ現在ある研究誌に投稿中であるが、理論が長大なため半年間経過したが未だに審査中で受理されていない。今度はπ=2(空間次元)の場合の解析が待たれる。
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