研究概要 |
1,タイヒミュラー空間の座標付けとして、長さ変数のみで大域実解析的に記述することが、本質的には19世紀から考察されている。このとき必要となる長さ変数の最小個数決定問題を私は解決し、さらに、その変数空間も記述した。しかし、長さ変数の変数空間は複雑な多項式系で記述されることが分かり、長さ変数によるタイヒミュラー空間の解析は、ある意味で大変となる。次に、「双曲幾何においては、角度は長さより情報量が多い」というアイデアを私は持ち、角度変数を新たに導入して、タイヒミュラー空間の大域実解析的な記述を試みた。現段階では、以下に述べる方法により、一部の場合の記述のみ成功している:離散群Gの特別な基本多角形の辺を貼り合わせることで、Gが表現する標識付きリーマン面と(単純)閉測地線が得られる。双曲幾何を用いて、基本多角形の辺の長さと内角の関係を求め、さらに、この多角形の存在条件をリーマン面上の交角に対応する多角形の内角で決定することを考える。これから、タイヒミュラー空間の大域実解析的な角度変数を具体的に構成でき、その変数空間の記述も得られた。 2,角度変数を用いて、タイヒミュラーモジュラー群の表示を試みた。現段階では、一部のタイヒミュラー空間でのいくつかの生成元の表示のみ得られた。基本的なタイヒミュラーモジュラー群の融合積を角度変数で表示することを考察し、一般の群の表示を具体的に決定したい。その際、融合される元の一部は、単純分割閉曲線に沿う回転にでき、角度変数による融合積の表示は長さ変数の場合より見やすいと予想される。
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