超局所解析を定量的な視点から行う事により、偏微分方程式の様々な問題(特に非線型問題)に新しい見地を与えようというのが、当研究課題の大きな目標であった。本年度は特に、偏微分方程式の初期値境界値問題に対してアプローチを行い、基本的な(即ち、広範な問題に対して有効な)定量的評価を統一的に与えることを主眼においた。これにより、以下のような成果を得る事ができた事を報告する。 半線形方程式の解の除去可能特異点に関する一般理論の構築:境界に角がある状況のひとつの極端な例として、一点が除外された穴あき領域での偏微分方程式の解を考察した。その場合の境界値問題に相当するものとして、偏微分方程式の解に関する特異点の除去可能性、すなわち穴あき領域での超関数解が全領域にまで解として延長できるかという問題に関して、そのLp-カテゴリーでの一般論を構築した。その際、 (1) 非線型問題への応用・・・調和写像などの幾何学的変分問題 (2) 古典解の場合の考察・・・「リーマンの拡張定理」の一般化 などを(pを動かす事により)取り扱えるようにする事も念頭に置いた。これらに関しては、従来は、ボホナーのアイデアによるポテンシャル論的方法が用いられてきたが、ここでは超局所解析的手法とLp一理論を用いた定量的考察をあわせ用いる事により、ボホナーの方法では示せないような一般の半線型方程式における解の特異点の除去可能性を示す事に成功した。さらに、この方法は、領域の穴をより高次元の集合に一般化した場合にも適用可能である。
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